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2008年4月

中島聡『おもてなしの経営学』(アスキー新書)について

おもてなしの経営学 アップルがソニーを超えた理由 (アスキー新書 55) おもてなしの経営学 アップルがソニーを超えた理由 (アスキー新書 55)

著者:中島 聡
販売元:アスキー
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先日、海部美知『パラダイス鎖国』の書評を書いたので、先月の八重洲ブックセンターでの対談のもう一人の主である中島氏の本書を読んでみた。

 

いきなり書評を書こうとも思ったのだが、それよりもAmazonでのレビューがこの点で厳しいことが多く書かれているので、それをダシにして感想を書いてみたい。

 
   

(1)「著者のblogを愛読しているので、期待していたが、雑誌の記事の採録や対談の記録で、資源の再利用を見ている感じ。[星3つ]

 
   

(2) ブログを日ごろから読んでいたので予約までして楽しみにしていた本だが、271ページの本書の123ページ以降、すなわち半分以上のページ、が特別対談で占められているというなんとも期待を裏切られる作品。第一章「おもてなしの経営学」は、ほぼブログと同じ程度の情報量しかない。 [星1つ]

 

たしかに、気持ちは分からなくはないが、先月の対談でも中島氏本人が「海部さんの本ほど論理立ててまとめられていない」「書くのに苦労して、プログで書いたことと対談を入れてなんとか一冊の本になった」という趣旨のことを既に言われたので、読後に違和感や失望はなかった。

 

上の2つの意見には、アマゾンレビューでも投票が多い(しかも「参考になった」とするものが多数)のだが、これら2つの意見は、はっきりに言うと、blogを普段から読んでいる人が勝手な期待をしてそれが裏切られただけのことにすぎない。世の中には中島氏のブログLife is beautifulを読んでいない人はたくさんいるのだ。だからこそ本を出したということもあるだろう。世の中には対談だけを収めた本も数多くある。本書に対する正当な評価とはいえないだろう。

 
   

(2)(続き)経営にはおもてなしが重要という主張に対して、同意・反対できるだけの論理が展開されていないため、本として出版するレベルにまで昇華されてないように感じられた。ブログでは、その程度の内容でエントリーしてもいいだろうが、本として出版する以上、もうすこし踏み込んだ考察がほしかった。

 
   

(3) 同じようなことを見方を変えて書いていたりするのでときどき「あれ?前のページでも同じことを言っていたような」という気分になります。[星3つ]

 

これらの指摘には同意。ただ、これは先にも述べたように、書いた本人がよく分かっていること。むしろ、この問題は、編集者に責任がある。中島氏はブログは書いているけれどもプロの書き手とは言い難いのだから、編集者がもう少し時間をかけてきちんとサポートしてあげるべきだろう。アスキーの早く出版したい(しかも海部氏の『パラダイス鎖国』と合わせて)との意向が透けて見えるような気がする。

 

では、私はどう思ったかというと、上記の欠点はあるとはいえ、素直に面白いと思った。実は中島氏のことを失礼ながらそれほどよく知っていたわけではなく(ブログも去年の中ごろから読み始めたばかり)、本書を読んで、日本人にも、こうした人材がいたのかと今頃になって感心した。彼のブログはギークたちがよく読んでいるらしいが、分かるような気がする

 

確かに、本書では中島氏の言いたいことが整理されておらず、特に第2章はタイトルが「ITビジネス蘊蓄」(!)というふざけたものになっていることから分かるとおり、ただ彼の過去のブログのエントリーを並べただけなので、分かりにくい。むしろ、第3章の対談(特に古川亨氏との対談、梅田氏との対談)を読むと、彼が考えていることがよく分かるように思う(ひろゆきとの対談は、むしろひろゆきの方が主役という感じ)。対談という形式が、対談相手とのインタラクションの中で彼の言いたいことを分かるように引き出しているように思う。

 

もちろん、彼のいう「ユーザー・エクスペリエンス」=「おもてなし」の重要性にはうなずけるところが多い(1)(もっとも、私は、この言葉よりも、それと対比される「床屋の満足」というフレーズが気に入ってしまったが(2))。中島氏の「おもてなし」は、ものづくり寄席で聞いた阿部誠教授の話にもつながると思った。

 

(1) ただ、日本のシステム構築は、ユーザのニーズに合わせてカスタマイズしすぎることが逆に問題になっているようだから、「おもてなし」も時と場合によるということはいえるのかもしれない

 

(2) 既存の言葉で置き換えると、それぞれ「マーケット・イン」、それに対比される「プロダクト・アウト」といったところだろう。)

 

 

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”Obama>Clinton” 2題 (CNNから)

さきほどCNNを見ていて2つ面白かったこと。

(1) 米国での世論調査によると、

・黒人大統領でもOK ・・・・ 76%

・女性大統領でもOK ・・・・ 63%

とのこと。こちらに日本語でもありますね(これを読んで知ったが、黒人の方が白人よりも「黒人の大統領でOK」という答えが少ないのはちょっと驚き)。

(2) まだやっと話せるようになったばかりの小さな子供たちに、大統領候補である「ヒラリー」「オバマ」「マケイン」と言わせようとすると、子供はみな「オバマ」とは口に出していうけれども、「ヒラリー」「マケイン」とは言わない。「ヒラリー」「マケイン」といわせようとしても、黙ってしまったり、逆に「オバマ」としか言わなかったりする。これは親がオバマ支持であるなしに関係ないらしい。番組に出てきた研究者によると、子供にとってオバマ(Obama)の"b"とか"m”という子音は子供にとって基本的でまず覚えやすい音だからではないかとのこと。ただ「オバマ」「オバマ」を連呼する子供を見ていて思わず(笑)。

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書評:『幕臣たちの明治維新』(安藤優一郎著、講談社現代新書)

幕臣たちの明治維新 (講談社現代新書 1931) 幕臣たちの明治維新 (講談社現代新書 1931)

著者:安藤 優一郎

販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 

本屋で気軽に手をとって思わず買ってしまった本。近代史の本にはどうしても手を出したくなってしまう。 

さて、本書は、明治政府成立後の徳川家家臣(幕臣)たちのその後を取り扱った本である。勝海舟、榎本武揚、渋沢栄一等の一部幕臣が明治治世下でも活躍したことは知られているが、大多数の旗本・御家人たちが明治以降どのような運命をたどったのか、一般に知っている人は少ないと思う(私もその一人)。そうした敗者の歴史を辿ったものとして興味深い本である。

明治政府の命で静岡に移った徳川家は家臣たちに、明治政府への出仕、自分で農業や商売を始めるという選択肢も与えたが、ほとんどの家臣は、静岡藩が財政逼迫で大幅なリストラが必要だったにもかかわらず無禄覚悟で静岡に移住する途を選び、結果として過酷な生活を強いられた。自分で商売等を始めた家臣もその多くは厳しい生活を送った。明治政府に出仕した者も人々から白眼視された、という。その他、幕臣たちは人材の宝庫で明治政府からのヘッドハントがあったこと、明治政府の中級以下の官僚の多くが旧幕臣だったこと、幕府のお膝元東京では反明治政府の裏返しとして西南戦争での西郷人気が高かったこと、そして明治22年に開催された東京開市(=家康江戸入城)300年祭は幕臣も集まったほか江戸を懐かしむ沢山の市民で大人気を博したこと等が語られている。

我々が知る薩長等の勝者の歴史と異なる、一般に知られない敗者たる幕臣の歴史、加えて当時の東京の人々の幕府への思慕を要領よく分かりやすく書いている。気軽に読みこなせるのは、さすがに講談社現代新書といったところだ。ただ、手軽さを意識したのだろうか、大まかな点だけが語られている感があり、敗者の歴史として読むには内容にやや物足りなさを覚えた。例えば、一般の旧幕臣たちが明治政府の治世で何を思って生きたのか、彼らの生の声をもう少し取り上げても良かったのではないか(本書の記述からある程度は想像可能だが)。また、本書で一部が取り上げられている山本政恒の自分史の記述も興味深く、これを中心に据えて書いても面白かったのではないかと思う。

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