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The Economist: Why Japan keeps failingを読んで

多少時間がたってしまったが、英エコノミスト誌(The Economist)の一つ前の号(2/23-29号)のカバーは"JAPAIN"であった(ただし、これは日本版(もしくはアジア版?)だけで、欧米版はカストロの引退がカバーであった)。もちろん、これは、Japanとpainを掛け合わせたもので、ラフにいうと、日本経済の停滞の原因を政治家に求めているものである。日本国内でも(多少)話題にはなったようである。Leaders(1ページ)ほか、記事としてBriefing: Japan's Pain, "Why Japan keep failing"とタイトルされた3ページのものが掲載されている。

 

既にどこかで日本語の要約や全訳が掲載されていそうだが、この3ページものの内容は、要するに、

 
   

・小泉政権下で市場志向の改革がおこなわれ改善しつつあるように見えたが、また最近経済が低落しつつあある。株価は下がり、経済も減速傾向。また、少子化、地域経済不振、多額の政府債務といった問題をかかえる。

   

・企業部門はまだよいが、活発に投資が行われているもののリターンは低い。また、輸出は好調だが、国内消費が低いまま。小泉改革で、低金利と低賃金を強調することで日本経済を過度に輸出に依存し外的ショックに脆弱にさせたのではないか。

   

・さらに、政治家や官僚の能力のなさが問題を引き起こした。たとえば、国交省不況。

   

・日本は経済成長を果たすために多くの経済改革が必要だ。しかし、改革は放棄されている。その責任は、がっかりするような能力やビジョンしか政治権力者層と憲法が生んだ混乱にある。

   

・責任は、まず第一に、安倍前首相。次に、福田首相、そして小沢党首。(それぞれにつき、いろいろ書かれているが、省略)

   

・ほとんどの人は、内部矛盾で破裂している二大政党、異なる政党が支配権を握ることを想定していなかった憲法、政治を国家運営のための有権者の選択の手段でなく、個人的(あるいは一族の)ビジネスとしてきた文化のせいだというだろう。

   

・選挙は、問題を解決しないかもしれないが、政党に自らの立ち位置を有権者に示すようにさせるだろう。

   

最後に、有権者も問題の責任の一端を負わなければならないだろう。

 

というもの。これを読んでの感想。

 

・日本経済停滞の大きな原因の一つとして、政治(家)の責任に焦点を当て、それを明確に論じた点で意義がある。(もちろん日本人の多くも気が付いていたことかもしれないが)。"the incompetence and unpredictability of politicians"とか、"Blame a political establishment of underwhelming talent and vision"とか、キツい言葉が並べられていて小気味よい。

 

・ただし、政治(家)の問題を論ずる記述のほとんどを、安倍、福田、小沢の三人の問題に関するものに割きすぎている。また、その内容も表面的なものばかり。これは、マスコミや政治関係者に面白いネタを提供する(実際、週刊誌でも記事にされている)が、逆にいうとそれに視線が集まり、それで話が終ってしまいかねない。むしろ、そのあとのわずか2つのパラグラフに書いてある以下の文章の方が重要である。

 
   

Most of all, perhaps, blame two parties bursting with internal contradictions, a consititution that never envisaged opposing parties controlling the Diet's two chambers, and a culture that treats politics as a personal, sometimes familiy, business, not a means of offering voters choices about how their country should be run. An election would not solve these problems, but it might be a least encourage parties to tell voters what they stand for.

   

Lastly, the voters must take some of the blame. Ten years ago, when The Economist lamented Japan's amazing ability to dissappoint, one shrewd parliamentarian wrote in to challenge that. The headline, he said, should have read, " The Japanese people's amazing inablity to be dissappointed." A general election would at least give them the chance to start holding their politicians to a higher standard.

 

このあたりを指摘するのはさすが(というより、これぐらいの指摘を国内の人間がちゃんとしておけ、と言いたい)だが、そこをもう少し深く突っ込んで書くべきではなかったか。その点で本記事は物足りない。

 

・また、日本経済に関しても、「改革か、しからずんば死か」的な、割と紋切り型の単純な論法にとどまっている。海外からの視点としてそういうのは分からないではないが、「改革reform」という言葉は、誰でも使う((それこそ反改革派でさえ自分たちは改革しているという)。問題は「改革」として何をどうすべきか、という点がおざなりにされていること。しかし、本記事はそこに触れていない。

 

・進めるべき改革の例として、海外からの投資環境の改善、関税引下げ、農業補助金の削減、自由貿易、外国企業への税制の改善、さまざまな企業補助金の廃止、フレキシブルな労働市場、財政規律、年金、保険、民営化等を挙げている。それらは(海外から見たビジネス環境を重視している傾向が強いが)おおむね頷けるものがあるが、これらの多くが、これまで十分に政治の重要課題として取り上げられていない(何もしていないわけではないのは承知しているが、政治における重要度が十分高いとは言えないし、議論も問題のポイントも必ずしもついていない)。それが問題。

 

・本記事は小泉にやや甘め。確かに小泉はある種の改革を妨げる「抵抗勢力」を押し切って改革を進めた政治手法には大きな評価点が与えられるが、政策の内容としては、比較的重要性の低い郵政改革ばかりに重点が置かれ、それが達成されるとすぐさま政権を投げてしまい、上で指摘した各種の改革に熱心だったとはいえない。というより、その重要さをおそらくは理解していなかったように思える。その意味では、小泉も、安倍ほか他の政治家と同じ穴の狢だったと言えるだろう。そもそも安倍を引き上げることにしたのは小泉であった。

 

・さらに、デフレを長引かせている中央銀行(日銀)の問題に本記事は一切ふれておらず、この点で不適切。

 

・なお、どうでもよいことだが、(以前同誌が見出しに使った)”Japan's amazing ablility to disappoint"というフレーズを何回も記事中で(形を少しづつ変えながら)使われている。この記事の署名がないので誰が書いたのか分からないが、よほど気に入った表現のようだ。つまりは、このフレーズが日本の姿を最も的確に表していると思っているようだ。困ったことに、住んでいるわれわれ日本人にとっては、少しもamazingではないのだ。

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