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海部美知『パラダイス鎖国』(アスキー新書):まとめ

先日(3月11日)の八重洲ブックセンターでのトークショーは、この本と、中島聡氏の『おもてなし経営学』の出版を記念していたものであった。その模様の概要にも書いたが、トークショーの際には本書を読んでいなかったので、さっそく読んでみた。

 

タイトルの「パラダイス鎖国」は著者が2005年の夏にブログした言葉。著者によると、

 
   

「もう日本人は海外に行きたくなくなったし、海外のことに興味がなくなったのかもしれない」と感じた。そして、その状態を「パラダイス鎖国」と名づけた。(p13)

 

現在の日本の状態を指すものとして、知る人ぞ知る言葉である(なお、同類の状態の日本を指す言葉として、「ガラパゴス化」という表現もされる)。そうした言葉を生み出した海部氏の著書として、待望の本である。

 

さて、本書の内容だが、次のとおりの構成となっている。

 
   

第1章「「パラダイス鎖国」の衝撃

   

「パラダイス鎖国」の状態の日本を示していると言える事例を紹介。海外旅行に行かなくなった日本人、邦画・Jポップの興隆と洋画・洋楽への興味の低下、海外(アメリカ)で人畜無害となってきた日本人のイメージ、携帯電話をはじめとする電機産業の内弁慶ぶり、など。

   

第2章「閉じていく日本」

   

これまでの日本のグローバル化は、2つの公式、すなわち「公式1:数の多い方が勝ち」、「公式2:グローバル・ブランドの確立と維持」によってきたが、その後の新たな公式が見つかっていない。「パラダイス鎖国」となった日本には、(1)「海外におけるジャパン・ブランドの低下」、(2)「日本の社会の変化が遅く、外界の変化についていけなくなっていること(議論の分かれない部分にだけエネルギーを集中)」、(3)「海外への自然なあこがれを日本人のインセンティブとすることができなくなっていること」、という3つの問題がある。

   

第3章「日本の選択肢」

   

アメリカは「パラダイス鎖国」の先輩であるが、各種のモデルが存在する多様性をもっており、そこに「内なる黒船」によるイノベーションベースの経済が成立している。「パラダイス鎖国」となった今の日本には、(1)これまでの「果てしなき生産性向上戦略」をとる(マイナーモデルチェンジ)か(2)新しく「試行錯誤戦略」をとる(フルモデルチェンジ)かの2つの選択肢があるが、「ゆるやかな開国」で、イノベーションベースを起こして成功する経済、「変化を先取りする体質」を目指すべき。この際、「ゆるやかな開国」とは、多様性のあるものが共存すること。そこに、「厳しいぬるま湯」を作り出し、ここから「内なる黒船」を生み出すことが必要である。

   

第4章「日本人とパラダイス鎖国」

   

イノベーションを起こすには「プチ変人」を育てて受け容れることが必要である。また、現在の日本では昔ながらの雇用慣行が阻害要因になっていることが多いが、気軽に転職できるようになったり外部の人材を登用できるようになったりすればゆるやかな開国も進む。時代に合わなくなった仕組みに固執せず新たなシステムに向かうべき。いま、多くの普通の日本人が軽やかなグローバル化を選んでいる。「パラダイス鎖国」の一番危険な点はバランス感覚をなくすこと。少しずつ開国へ向かっていこう。

 

著者が言いたいことは感覚的によく分かるものだし、個々の表現・内容を見ると特に難しいものはない。したがって、多分、多くの人は読みやすい本だと思うだろう。しかし、いくつかの事項がごちゃ混ぜになっており、また「?」と思われるようなところもあって、(意外に思われるかもしれないが)実際のところ、上のようにロジックを整理してまとめるのには思ったよりも時間がかかった。

 

そういうこともあって、本書に対する評価については、改めて書くことにしたい。→ 書評(3/23)

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