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終身雇用制への支持86.1%、「意欲や能力に応じ自由に競争できる社会」よりも「平等社会」に支持

いくつかの新聞にも記事が出ていたが、独立行政法人労働政策研究・研修機構「第5回勤労生活に関する調査」結果から(3月24日公表)。

 

1 日本型雇用慣行の評価

「終身雇用(1つの企業に定年まで勤める日本的な終身雇用)」と「組織との一体感(会社や職場への一体感を持つこと)」を支持する(「良いことだと思う」と「どちらかといえば良いことだと思う」の合計)割合は、それぞれ2001 年(76.1%)、2004 年(77.8%)に一度低下した後に再び上昇に転じ、2007年には9割弱(それぞれ86.1%、84.3%)となった。

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2 望ましいキャリア形成

最も望ましい職業キャリアとしては、「一企業キャリア(「1つの企業に長く勤め、だんだん管理的な地位になっていくコース」+「1 つの企業に長く勤め、ある仕事の専門家になるコース」)」が1999 年から一貫して高く、2007 年は約5割(49.0%)となっている。2004 年と比較すると6.1 ポイントの上昇となっている。次いで、「複数企業キャリア(「いくつかの企業を経験して、だんだん管理的な地位になっていくコース」+「いくつかの企業を経験して、ある仕事の専門家になるコース」)」で2割強(24.6%)となっており、2004 年よりわずかに低下している。「独立自営キャリア(「最初は雇われて働き、後に独立して仕事をするコース」+「最初から独立して仕事をするコース」)」は、1999 年から下降傾向にあり2007 年には約1割(11.7%)となっている。

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(中略)

7 日本が目指すべき社会

これからの日本が目指すべき社会のあり方についてきいたところ、1999 年から2004 年までは「意欲や能力に応じ自由に競争できる社会」が4割程度で、「貧富の差が少ない平等社会」を上回って推移していたが、2007 年には、これが逆転、「貧富の差が少ない平等社会」が大きく上昇(約13 ポイント上昇)した一方で、「意欲や能力に応じ自由に競争できる社会」が大きく(約11 ポイント)低下している。

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ソース:労働政策研究・研修機構の調査結果(PDF)

 

この結果は、日本に住む人々の大多数は、海部さんの『パラダイス鎖国』の中で今後の方向として思い描く世界とは別の方向を指向しており、その傾向が更に強まっていることを示すようにも見える。

終身雇用への郷愁が強くなっていることはその一つだが、特に私にとって印象的だったのは、最後に挙げた「日本が目指すべき社会」で、これまでトップを占めてきた「意欲や能力に応じ自由に競争できる社会」を抜いて、「貧富の差が少ない平等社会」が最も大きな支持を集めるようになったことである。社会主義的指向といえばよいのか、あるいは「パラダイス鎖国」の強化を望んでいるといえばよいのか。リスク回避、安定志向、悪く言えば、「後ろ向き」である。そうしたものは不安定な経済社会環境を反映していると考えてもよいだろう。

ここでの問題は、こうした人々が嗜好する社会のあり方が、本当に日本経済全体の豊かさを、つまり、一人一人が豊かに暮らせる社会を、本当にもたらし得るか、ということである。確かに、かつての高度成長期からバブル期までは、終身雇用(といっても実際には一部の企業で実現したにすぎないのだが)のもとで経済成長が果たされた。しかし、日本を取り巻く状況はその時期とは異なっており、かつて存在した雇用システムと経済成長の間の「好循環」はもはや保証されなくなっている。この調査結果は、そのことを多くの人々が十分に気づいておらず、過去への郷愁にとらわれていることを示しているようにも見える。

かつてのような大きな成長が望めない以上、穏やかなインフレのもとでの安定的な成長と、その中での生産性の向上を果たしていくことが必要であり、その点では、適切なマクロ政策と、(たとえば、イノベーションを起こりやすくするなど、経済全体としての)生産性の向上を引き出すような仕組みが必要である。

この調査で示されている人々の選好は、マクロ経済政策の失敗による経済不振・デフレ化、その他政策が導いた不安定な経済環境がボディーブロー的に利いている結果ではないのかと思う。人々がこうしたメンタリティを持ってしまうことによって、より柔軟な社会システムの実現が一層困難になっているおそれもある。その意味で、これまでの政策(無策を含めて)の罪は重いのだが、同様の意味で、今後も、政府・日銀がとっていく政策は重要である。

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